Science Information Network—SINET4(学術情報ネットワーク、サイネット・フォー)

山形DCを活用した高度な分散キャンパスネットワーク環境の構築


国立大学法人 山形大学では、シングルサインオン環境やIPv6マルチホーム接続など、先進的なIT環境を構築・運用しています。その概要とSINET4におけるノード新設の効果について、山形大学 基盤教育院 情報ネットワークセンター 准教授 田島 靖久氏、同 准教授 吉田 浩司氏、同 助教 伊藤 智博氏にお話を伺いました。
(インタビュー実施:2012年7月12日)


まずは山形大学のIT環境の特徴について伺えますか。


person1.jpg吉田氏:本学では山形県内に4ヶ所のキャンパスを展開しており、小白川キャンパスは人文学部・地域教育文化学部・理学部、飯田キャンパスは医学部と附属病院、米沢キャンパスは工学部、鶴岡キャンパスは農学部と、それぞれ学部も異なっています。各キャンパスは高い自立性を持って運営されていますので、情報ネットワークセンターについても別々に設置し、独自に環境やサービスを提供しています。こうした形態で全学のITインフラを運用している大学は、全国でも珍しいのではないでしょうか。


各キャンパスそれぞれにセンターを設置することで、各学部の特性に応じた最適なサービスが提供できるというわけですね。


person2.jpg田島氏:そういうことです。もっとも、4キャンパスで運用を完全にバラバラにしてしまうと、調達などで非効率な部分も出てきてしまいます。そこで、センター間での連携を強めると同時に、メールサーバやe-ラーニング用サーバなど、全学で共通的に利用するシステムに関しては、小白川キャンパスのセンターで一括運用しています。また、本学ではActive Directoryによる管理を行っていますが、ドメインは工学部とそれ以外の2つに分けています。工学部ではITに関わる高度な研究・教育を行いますので、あえて他とはドメインを分けて先進的な活動が行いやすいようにしているのです。

伊藤先生は工学部(米沢キャンパス)ですが、先進的な取り組みの具体例をいくつかご紹介頂けますか。


person3.jpg伊藤氏:たとえば本学では、Active Directoryと認証基盤を組み合わせたシングルサインオン環境を構築しています。どのキャンパスへ移動しても意識することなく各種のサービスを利用できるほか、学術認証フェデレーション(学認)との連携なども行っています。また、キャンパスが県内各地に分散していることを逆手に取り、サービスの可用性を高める仕組みも構築しています。具体的には、小白川と米沢の両キャンパスに広域負荷分散装置を導入し、万一どちらかが自然災害などの被害を受けた際には、稼動している側のキャンパスにアクセスを振り向けられるようにしています。
 ネットワーク関連のトピックとしては、IPv6への対応が挙げられますね。今述べた認証系のシステムや広域負荷分散装置などについてもすべてIPv6ネイティブ対応を完了しており、小白川・米沢の両キャンパスによるIPv6マルチホーム接続が実現しています。IPv6は今後のネットワークを支える重要技術の一つですので、検証や研究に力を入れていく予定です。


SINET4では山形県ノードが新設されましたが、その効果については如何でしょう。


吉田氏:これは非常に大きいですね。SINET3の時には東北大経由での接続で、仙台-山形間の回線帯域も100Mbpsしかありませんでした。最近では遠方の大学や研究機関と連携して研究や会議を行うケースも多く、本学でも農学連合や素粒子物理学など、様々な分野でネットワークを利用した共同研究を行っています。しかし帯域が100Mbpsしかないと、どうしてもテレビ会議やファイル共有などで気を遣う場面が出てくるんですね。その点、SINET4では山形ノードへ接続できるようになりましたから、帯域不足の問題で頭を悩ませることはなくなりました。


田島氏:しかも以前は、もう一つ大きな問題がありました。本学の場合は学内での利用だけでなく、県内の他の大学や高専、県立の研究機関なども、本学経由でSINETに接続しています。学内だけでも相当トラフィックが多いのに、他機関も一緒に使うわけですから相当厳しい。実際、本学経由で接続している学校等の中には、昼休みのピーク時などにアクセスがタイムアウトしてしまうケースもあったほどです。その点、現在では帯域にも随分余裕がありますし、各機関が直接山形ノードへ接続することもできるようになりました。ネットワーク環境は大幅に改善していますね。

伊藤氏:以前は正直ネットワークが遅いと感じる場面も多かったので、帯域が太くなったのは非常にありがたいですね。たとえば研究用にVLANを追加したいと思った時も、元々が100Mbpsしかない状態のところへ「20Mbps下さい」とはちょっと言い出しにくい(苦笑)。その点、現在では、研究者の要望に応じて充分な帯域を確保できます。特に工学部では大容量データを使用する研究も多く、Spring-8などの先端研究機関と接続したいというニーズも珍しくありません。こうした要望にもしっかりと応えられるようになったのは、大きな進歩と言えるでしょう。


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山形大学ネットワーク構成図



先生方の研究活動にも大きなメリットがあったということですね。


田島氏:ええ。実は去年の夏なども、東日本大震災による電力供給の問題で、関東の研究機関で共同研究用のサーバが立てられないという事態が生じました。そこで急遽、本学のサーバをファイル共有用として提供することで急場を凌ぎました。以前のような細い帯域では、とてもこうした対応もできなかったでしょう。


吉田氏:また、研究活動だけでなく、大学の業務面でも効果が生まれています。本学では東京サテライトキャンパスをはじめ、国内外に拠点を展開しています。こうした場所へ職員が出張で出向いた際なども、ネットワーク経由で快適に学内の業務システムを利用できるようになりました。メールや業務データをローカルで持ち歩かずに済むので、セキュリティ的にも安心です。


伊藤氏:それともう一つは、事業継続対策の強化です。主回線のSINETとは別にもう一本バックアップ回線を用意し、それぞれ別々にピアリングを張っておけばかなり安全な環境が実現できます。以前のように仙台まで回線を引くとなると相当なコストが掛かってしまいますが、山形ノードまでなら負担も軽くできます。


最後にSINETへの期待と今後の意気込みを伺えますか。


伊藤氏:学生達がより効率的に学べる環境を用意することが重要と考えていますので、講義資料などのコンテンツを大学間で共有できるようなサービスをSINETで提供してもらえると嬉しいですね。研究だけでなく教育にもSINETをフル活用し、次世代のエキスパート育成に役立てていきたいと思います。


田島氏:SINETはもちろんのこと、サーバ証明書やeduroamなど、NIIのサービスはいつも便利に活用させてもらっています。今後もさらなる拡充をお願いしたいですね。また、学内に対しては、各学部の教職員や学生の意見を取り入れて、よりよいサービスを実現していきたいと考えています。

吉田氏:本学では地元イベントへの参加や中高生向けの活動なども積極的に行っていますが、SINET4を活用することでネットワークを利用した地域貢献もいろいろと考えられるのではと思っています。ぜひ山形地方ならではの特色を活かしたサービスを創り上げていきたいですね。

ありがとうございました。